現職地方女性議員の選挙と妊娠<中野区議会議員・中村延子さんのケース #4 最終回>

こんにちは!台東区議会議員の本目(ほんめ)さよです。「届きづらい女性の声を政治につなぎ、一つずつ実現していく」ことをミッションとした団体・WOMAN SHIFTの代表も務めております。

WOMAN SHIFTでは選挙や任期を理由に議員に妊娠・出産を諦めてほしくない、という思いのもと、現職議員の「妊娠・出産」について発信をしています。私・本目自身も選挙3か月前に第二子を出産した経験があります。

選挙前に出産をした本目のケースとは別に、選挙後の出産を選択された中野区議会議員・中村延子さんにお話を伺っている第二弾の企画。

第4回となる今回は、延子さんが産休から復帰して1ヶ月を過ぎた頃(2024年7月)の記録です。

産休から復帰しての仕事の実情や、他の人の選挙応援と子育ての両立、そしてWOMAN SHIFTが目指していきたいところについてもお互いの意見を出し合いました。

■産休復帰からの議員の仕事、実際どう?

本目:現職女性区議会議員の選挙と妊娠、出産に関するテーマでお話してきましたが、のぶちゃんのインタビューは今回が最終回です。産休から復帰したんだよね。

中村:はい、復帰しました。

本目:今日の議題は主に2つ考えていて。一つは産休明けてどう?ってところと、もうひとつは先日ちょうど都知事選が終わったこともあって、選挙応援と子育てみたいなところについても話せたらと思ってます。

ということで、産休明け、いつだっけ。

中村:5月22日から復帰しました。

本目 :5月22日から復帰で、6月議会はまるっと出席したんだよね?役職的には今も副幹事長のまま?

中村:副幹事長のままです。

本目:実際復帰してどうでした?まずは全体的なざっくりとした感想を

中村:一言で言うと、辛い(苦笑)

本目:どの辺が辛い?

中村:まず、睡眠時間がちゃんと取れてない状態で、搾乳と仕事と子どもの授乳時間と…ってずっと追われながら過ごしてるみたいな感じ。

本目:そうだよね。搾乳はある程度のずれは可能だけれども、あまりにもずらしすぎたら、乳腺炎とかのリスクも高まるしね。それとは別に子どもの授乳もタイミング読めなかったりするよね。

中村:そうなの。子どもの授乳はだいたい3時間起きだけど、搾乳は4〜5時間おきとかで。 

するとズレが生じるから、搾乳じゃなくて仕事前に授乳できるかなとか、そういうのも計算しながらで、考えなきゃいけないことが結構あって大変…

 

本目:わかる。

 

中村:でも、2ヶ月でスパッと母乳を辞めるのも私はしたくないし、保育園に通わせないといけないので、免疫力もつけたい。そのジレンマに「う~…」みたいな毎日。

 

本目:すごくわかる。職場だと、搾乳場所とかって確保してるんだっけ?

 

中村:定例会始まる前までは授乳室使ってた。そもそ保育園が6月からだったから、1週間ちょっとは子連れ出勤で。

 

本目:そうだよね

 

中村:だから余計に仕事と授乳の時間のやりくりがまず大変だったっていうのがあって。正直ほぼ仕事にならないみたいな…会議だけ出るみたいな感じで。

6月の定例会が始まってからは議員が使える応接室を予約して、搾乳してます。

本目:なるほど。でも、その「予約をしなきゃ」みたいなのも、結構ずっと頭の片隅にあったりして大変だったりするよね。 

中村:予約はLINEworksでできるようになったから、すごい楽なんだよね。

本目:へえ!便利。そういうIT化はありがたいよね。ちなみに、子どもとの同伴出勤の時の会議は、会派の会議だったから同席OKだったの?

中村:そうそう、そういう感じ。

本目:会派の会議は正式な公務ではないので、大丈夫ということだね。正式な公務の時は、シッターとか使った?そのタイミングではまだ公務はなかった?

中村:そのタイミングではなかったんだけど、6月入ってから議会が紛糾して、夜10時半までかかったことがあって。

そのときは上の子は親にお願いしたんだけど、さすがに乳児と幼児を一緒に高齢の両親に任せるのは難しかったので、上の子だけ連れて帰って、下の子は置いてってもらって。 

で、夜はベビーシッターさんをその場で頼みました。他の議員さんがお知り合いのシッターさんを手配してくれて。

本目:それは強いね。もしそれがなかったら、自力でサービスを使って急いでシッターを探さなきゃいけなかったよね。議会がイレギュラーに伸びると辛いよね…

中村:本当にそう。まだ2〜3歳くらいになってればなんとかなるけど、3ヶ月になったばっかりの子はさすがに…園からも下の子は延長保育はまだやめてほしいみたいなのは言われてて。保育士さんの手配も大変だしね。

本目:そうなんだ、延長保育は何時まで?

中村:8時15分まで。

本目:どちらにせよ間に合わない時間だったんだね。

中村:そうなの。あと議会最終日は下の子が熱を出してしまって、それはそれでまた大変で。 そのときは下の子を親に見てもらって、上の子は延長保育で対応した。

本目:なるほど。1人だったら、なんとか親御さんに頼めたんだ。

中村:そうそう、片方だけだったらなんとか。

本目:そういう議会の紛糾とかって結構あるもの?うちはあまりなくて。

中村:うちもそんなにないかな。ここまでの紛糾は初めてだったかもしない。

本目:そういうのがあると、育児もそうだし、介護をしてる議員もきっと大変だよね。なので、長引きがちな議会だったりすると辛いなっていう…

■第一子と比較して、どう?

本目:あとは第一子と比べて、違ったことは多い?

中村:そうね、1人だけを育ててるんだったらまだ楽なんだけど、今は下の子と上の子の生活パターンも全然違うから私が休める時間がほぼなくて。

復帰すると日中も休めないから、「とにかく頑張る」みたいな生活。

夜も4〜5時間とかしか寝れないけど、それでも頑張らなきゃ!みたいなのが、やっぱりちょっと辛いかな。

本目:しかも、産後で体が完璧に復活してるわけじゃないしね。

中村:そうそう。

本目:第二子出産と育児の両立の大変さみたいなところは、きっと会社経営とかフリーランスの人で、産後すぐに復帰しなきゃいけないっていう人と、同じような辛さなんだろうなと思います。

■妊娠・出産と選挙応援について

本目:あとは、ちょうど今のタイミングとして(編集注:インタビュー日は2024年7月上旬)、先日都知事選と都議補選があったということで、「選挙応援」についても話を聞かせてください。

のぶちゃんは立憲民主党という政党に所属していて、今回の都知事選では蓮舫さんが出られていたよね。しかものぶちゃんは蓮舫さんの元秘書だったんだよね。

選挙の手伝いはしたの?ちょうど産休明けというタイミングでもあったし、どうなんだろう?

中村:それはすごい気を遣っていただいたようで、今回は選対には入ってないです。なので、総支部から「これ来てください」って言われた件以外は行ってなくて。あとは自主的に週末の街頭演説とか、顔出せそうなところだけ顔出してました。

本目:週末の街頭演説も子ども2人を連れて行くのも大変じゃないですか?生後3ヶ月だと自転車もきびしいし。

中村:そうそう。子連れでは2回しか行ってないんだけど、1回目は下の子だけ連れて、 上の子はパパと留守番をお願いしてた。2回目はうちの母と一緒に2人とも連れて行ったけど、上の子が途中で飽きちゃって。

本目:ハードルは結構高いよね。しかも連れてって演説聞くぐらいはできても、じゃあマイク握ってって言われても難しいしね…

中村:そう、下の子抱っこした状態で「マイク握ります?」って冗談で振られたけど、できないですよね。

本目:そうだよね。選挙の手伝いって政党で選対に入ってたらがっつりでめちゃくちゃ忙しい気がするんですけど、今の状況ではきっと難しいよね。

中村:あの働きは今の私にはできないので、今回は外してもらっててありがたかったなとは思います。 それでも車乗ったりとか、チラシ配りとかはしたので。

本目:しかも自分も議会中だしね。議会は議会でちゃんとやんなきゃいけないし、それにONして選挙が乗ってくるので、相当きついだろうなっていう気はします。

あと、ちょうど最近「子育てと選挙の相性は悪い」というポストをXで投稿してたのを見て、私も「そうだよね」と思ったんだけど、その真意についても詳しく聞きたいです。

<中村さんのポスト>

https://x.com/nobuko0902/status/1809613192819273856

中村:正直なところ、子育てがなければ今回の選挙応援もすごく行きたかったなって思って。特に今回の蓮舫さんの選挙は、私にとってはすごく思い入れの強いものだったんです。私自身の政治活動のスタートが学生時代の蓮舫選挙のボランティアからだったから、応援に行きたい思いがすごいあったけど、今回はどうしても無理で…

街頭演説の時間もだいたい朝か夕方で。自分の地域でやってくれれば、夕方とかでも行けなくはないけど、そういうわけにもいかないので。そうすると、行って手伝って帰ってくると、もう子どもは寝る時間みたいになっちゃうので…上の子だけだったらまだ両立できたと思うけど、下の子の授乳もあったりとかする中では難しいと判断せざるを得なくて。

私と同じように、子育て世代の議員は選挙の応援に行きたいけど行けない人もたくさんいると思うんだよね。議員の応援だけでなく、「演説を聞きたい」という一般の子育て世代にアプローチするのも今の選挙のやり方だと難しいなと思ったり。「子育て世代の声がなかなか届かない」って、そういうことだよねって改めて思ったんです。今までも思ってたけど、改めて。

本目:うんうん。

中村:私の中のジレンマと、さらに子育て世代に対するアプローチっていう意味で、考えるところがあったというか、思うところがあったというか、

本目:そうですよね。

政党に入ると、ベビーシッターの補助出してくれるとかもあるじゃないですか。その補助ってありがたい一方、政党の場合だと自分だけじゃなく他の人の選挙の応援もしないといけなくて。そのために夜授乳を1回飛ばしたり、寝るまで子どもと一緒にいられなかったりしても「シッターに預けて人の選挙を手伝いに行くのか?どうするのか?」みたいなところって、すごいジレンマを感じる気が私はするんですけど、その辺どうですか?

中村延子:めちゃくちゃジレンマあります。

本目:しかも今回ののぶちゃんは「行きたかった」んだもんね。行きたいけれども行けない、というジレンマ。

中村:ほんと。上の子が生まれてから、ずっとジレンマは感じてる。

今も下の子の授乳がなければ「1日ぐらいだったらいいかな」みたいに思ったりもするけど。授乳って直接あげられるのがその時ぐらいしかないのに、それを飛ばしていいのだろうかっていう罪悪感が私の中にはすごくあって。

半年とか1年とか過ぎればそんなに気にしないのだけど、さすがに今は無理だなっていうのが自分の中の判断で。

本目:すごい頑張ってやろうと思えば、たぶんできないことはないんだよね。体力的にもすごい頑張るとか、預けるとか、授乳を諦めるとか、できないことはない。でも、それも含めて自分が決断しなきゃいけないっていうしんどさもある気がしてて。

「絶対やりなさい!」って言われたら、もうやらざるを得ない。例えば自分の選挙だったら、もし夜までやれって言われたらやらなきゃいけない。私はそういうのは無かったけど。

中村:私もやってない。

本目:でも人の選挙で、さらに自分で決めなきゃいけない状況だとその決断の労力も辛いなって。

中村:辛いね。それはそうだね。取捨選択をずっとし続けないといけないっていう。

本目:そう、子どもがいるとそれが高まる気がするし、選挙と妊娠・出産が重なるとそれこそ取捨選択の連続になるなと思っていて。

■妊娠を望む女性議員および議員を目指す方へのメッセージ

本目:妊娠中から続けてきたのぶちゃんとの振り返りは今回が最終回になりますが、議員や議員を目指したい女性で妊娠を希望する方に何かメッセージをいただけますか?

中村:はい。私としては、一議員として妊娠・出産をするのはそんなに大変なことではないというか、選択肢はいろいろあるのかなと思っています。

ただどうしても議員は4年に1回選挙があったり、タイミングによっては議会がすごく忙しい時期と重なっちゃったり、重要案件が出てきたりっていうのがハードルに感じられると思うんです。それでも「いろんな選択肢があって、妊娠・出産や子育てを諦める必要はないんだよ」ということを伝えたいです。

選挙もあるけれども、議員にもいろんな選択肢があって、自分が希望する人生を歩むことも特に地方議員であればできることなのかなと思っているので、今までの固定概念に縛られることなく選択をしていってほしいです。

本目:うんうん、ありがとうございます。

議員の妊娠・出産と選挙の記録を取り始めたのは、まさにのぶちゃんが言ってくれた「選択肢を提示したい」というところがきっかけで。私ものぶちゃんと同じく地方議員が妊娠・出産をすること自体はめちゃくちゃ大変ってわけじゃないとは思うんだけど、やっぱり選挙が絡んでくると難しくなってくるよねという気持ちがあって。妊娠・出産は選挙のシーズンを避けるのかどうするのか、みたいなところも含めて具体的な選択肢を提示できれば後進の人にも役立ててもらえるかな、と思ったんです。

で、私は選挙の前に産むという決断をし(詳しくはこちら)、のぶちゃんは選挙の後にしたっていうところで、今回インタビューをさせてもらいました。 

いま統一地方選が終わって1年ちょっと経って、最近出産をした現職女性議員も都市部だと珍しくない気がしています、

中村:たしかに、そうだね。

本目:少なくとも23区とかでは結構事例があるんだよね。でもその人たちも、その区だと「初めてです」とか「すごい久しぶりです」みたいなのは聞いてたりする。

出産議員ネットワーク」という議員の中で出産した人たちのネットワークもあるんですけど、WOMAN SHIFTでも議員の妊娠・出産に関する経験談を共有するみたいなところもやっていきたいなと思ってて。「こういう時どうしてます」とか、議員の就労証明の話とか、直面しないとわからないことも多いなと思ってて。

中村:そうですね。妊娠・出産もそうですし、他にも女性特有の経験してないとわからないことって結構あるじゃないですか。そのあたりについてもサポートし合えればいいなって、私も思ってるところです。

本目:うんうん。WOMAN SHIFTがそういった相談の窓口になって、女性議員の選択肢がもっと広がればいいなと思います。

ということで最終回、ありがとうございました!またもし何かトピックがあればまた復活するかもしれないけれども、子育てと仕事で忙しい中お話聞かせてもらって感謝です。

現職地方女性議員の選挙と妊娠

以上が、のぶこさんが産休から復帰して1ヶ月を過ぎた頃(2024年7月)の記録となりました。

これまで4回にわたって記録を残してきましたが、私たちの記録が後進のみなさまの参考になれれば幸いです。

インタビュー中にも話題に上がりましたが、WOMAN SHIFTでは議員会員の女性議員のみなさまの妊娠・出産や、その他の相談事に関しても知恵や経験談を共有し合って、一緒に考えていければと思っております。議員会員にご興味のある方はぜひこちらのnoteをご一読いただけますと幸いです。

https://note.com/womanshift/n/n9c85b720f935

📕現職地方女性議員の「選挙と妊娠」 シリーズ一覧はこちら

https://note.com/womanshift/m/m51f15f71b7ac

編集:平理沙子(WOMAN SHIFTプロボノメンバー)

現職地方女性議員の選挙と妊娠<中野区議会議員・中村延子さんのケース #4 最終回>
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