こんにちは!
台東区議会議員の本目(ほんめ)さよです。「届きづらい女性の声を政治につなぎ、一つずつ実現していく」ことをミッションとした団体・WOMAN SHIFTの代表も務めております。
「選挙と妊娠」について、選挙3ヶ月前に第二子を出産した私と選挙2ヶ月前に双子を出産したうすいさんの経験をリアルタイムで記録に残している本企画。
今回は2022年11月、本目が妊娠8ヶ月の終盤、うすいさんが妊娠6ヶ月の頃の記録をお届けします。
主に議員の仕事の優先順位のつけ方や、産後の働き方の見通しについて話し合いました!
■2022年11月の記録の前半(本目 妊娠8ヶ月、うすいさん 妊娠6ヶ月)
―(インターン)今回もよろしくお願いいたします。いまお二人の体調や状況はどのような感じでしょうか?
(本目)今私が妊娠 8ヶ月の終わりで、予定日まであとちょうど2ヶ月ぐらいです。だいぶお腹が大きくなってきて、先週は胃が圧迫されて逆流するみたいな感じであまり食べられず、食べた後はしんどかったです。
体調面はそんな感じですが、あとは正直焦ってきた気持ちがあります。
―いよいよ出産が迫ってきてるからですか?
(本目)そうですね。ただ出産への焦りというより、休まなきゃいけない時が迫ってきているのに、決まっていないことが多い状況に焦りを感じています。
4月の選挙に向けてポスターはなんとなく決まったけど、その前に配りたいチラシがまだできていなかったり。本当はあと3回チラシを出そうかなと思っていたんですが、まあ2回かな〜とか。あとは本番のチラシも正方形のデザインにすることには決めたけど、折り紙のようにして紙飛行機かパクパクを作れるようにしたいけどどうしようかな、とかいろいろと悩んでいます。
―うすいさんはいかがですか?
(うすい)私は今妊娠6ヶ月の後半に入ったところです。お腹がだいぶ重くなって、いきなり出てきた感じです。
腰痛がもともとあったんですけど余計にひどくなっちゃって、座りっぱなしになってるとすごく痛んでしまい…運動もなかなかできませんし、いろいろ気をつけなきゃなというところです。
―本目さんは妊娠8ヶ月も終わりということでかなりお腹も大きいと思うのですが、外出はされていますか?お子さんの送迎とか。
(本目)夫が結構やってはくれていますけれども必要な時には行ってます。自分の歯医者さんや子どもの通院もありますね。
あとは会合などもどこまで出席するかというのは悩むところなんですが、産前の休業に入るまではなるべく顔を出そうとはしています。
―うすいさんも双子ちゃんのご妊娠で身体が重いとは思うのですが、外出はされていますか?
(うすい)先月は割と体調が良かったので外出していました。ただやはり腰は痛くて電車での移動が難しかったので、車を借りるなどいろんな手段でやっていました。
今は里帰りで北海道にいるため、外出も減りました。腰の痛みもますますひどくなってきたので、あまり動けない状態です。議会にも欠席届を提出しました。
(本目)もう出したんだ すごい!
(うすい)出しました。もう出した方がいいと言われて。出産前の産前休暇よりも、1ヶ月ぐらい早い時期で出しちゃったのかな?
(本目)休みの期間も1ヶ月長いってこと?
(うすい)そうですね。さすがに多胎というのと、 両親との都合もあって、里帰りで産むのが一番いいかなと考えたのでそうしました。本当はもう少し都内にいて、仕事を続けたかったのですが、あまりギリギリまで都内にいると里帰り先での病院の受け入れが厳しくなりそうだったりもしたので…
病院からも「双子なんだから、とにかく安静で過ごさないとダメだよ」と言われています。
(本目)あと議会の休みって、一応「産前何週、産後何週、多胎の場合は何週」みたいに決まってるじゃないですか?どうしたんですか?
(うすい)決まっている分は産前産後の休暇として提出し、早めに休んだ分は病欠の「欠席届」という形で提出したんです。
(本目)なるほど!
(うすい)もともとさよさん達にもアドバイスいただいていたとおり事務局長に相談しつつ、会派の先輩たちともどういう形が一番いいか相談して、このような形にさせていただきました。先日も私に代わって幹事長が会派を回って挨拶してくれていたみたいで、温かいなと思ってたところです。
(本目)そうすると、産後休暇まで含めてどれぐらい休む?
(うすい)産後どれだけ休むかがあいまいなのですが、私の場合、本当は3月9日が出産予定なんですけど、たぶん帝王切開で2月半ばくらいに産むことになるだろうと言われているので。11月〜3月中旬までを予定として書いておきました。ただ体調によってまた相談しようかなとも思っています。
(本目)4月までにしちゃうと、選挙できないもんね。
(うすい)そうなんです。だから、産後自分だけでもできるだけ早めに東京に帰りたい気持ちがあって。
(本目)じゃあ、お子さんたちの世話は選挙終わるまでご両親に任せるっていう選択肢もゼロじゃない?
(うすい)ゼロじゃない、どちらかというとそれが濃厚という感じですね 。
(本目)なるほど、でもその方が選挙にも集中できていいかもしれない。一人で双子を育てながら選挙って、イメージが全然つかなくって。
(うすい)本当にそうなんです。
―つまり、赤ちゃんも東京に帰ってくるのは5月ぐらいっていうイメージですか?
(うすい)そうですね。4月の選挙が終わった後、5月ぐらいには連れて帰ってこようと思ってます。
北海道から両親に来てもらって、東京で産むという形も含めて色々考えたんですけど、 都内の私の家が双子+両親となるとどうしてもスペースがない上に、車などの交通手段を考えても里帰りにして力を借りた方が安全に出産できそうと判断して、そういう選択にしました。
(本目)ちなみに北区議会はオンラインの委員会出席はできる?
(うすい)できないです。ちょうど今年の議会運営委員会でようやく視察を始めたっていう段階で全然まだまだ進んでおらず、委員会も欠席になっちゃいます。
(本目)なるほど。でもオンラインの出席も実際は善し悪しなんですよね。「オンラインができるんだから、現場に出れるでしょ」と言われちゃう可能性もあるし…
(うすい)確かに。
(本目)うちの議会もまだオンライン整ってないんですよ。ただ、おそらく私もあと2週間ぐらいで産前休暇に入るのですが、できれば自分の所属してる委員会には出たいなというのがあって。
一方で一般質問については今回は私が質問する番じゃないので、そういう意味では家でYouTubeで視聴する形でもいいかなというところはあります。産前休暇ではなくて、まず体調不良による欠席という形で提出して 、その次にある子育ての委員会はリアルで出ようかなと考えています。
そういう形でオンラインを組み合わせられることはメリットではあるんですが、その反面「オンラインだから出れるでしょ?」みたいに言われた時に、「じゃあ、産後すぐでも出るのか?」というのはまた事情が変わってくると思うんですね。
―例えば会社員でも子どもがちょっとした風邪を引いて、元気だけど保育園には行けないといった時にリモートワークができるのは便利ではありますが、大事な会議にオンラインで出なければならないとなるとやっぱり子どもが邪魔しに来ちゃったり、どこか集中しきれなかったりというのはありますよね。
(本目)そうなんです。議会のちゃんとした会議に、子どもが「ママ〜」って言って来ていいかというと基本ダメなんですよ。なので、そう考えた時に難しいですよね。
で、産後だと赤ちゃんがいるわけで、泣いた時に授乳しながら出席し続けていいのか?とかね。本会議場じゃないからいいのか等、オンラインを整備する上でその辺のルールも定めなきゃいけないはずで。
―以前のインタビューでも伺った内容と重なりますが、そういう点を鑑みても議員の妊娠出産にはまだ課題があると思われますか?
(うすい)そうですね、 ルールとして定まっていないことも議会では多い気はします。その理由はやはり現職議員でいる間に妊娠出産を経験していない人が多く、事例が少ないというのがあって。
でも女性議員が周りに全くいないわけじゃないですし、前例を聞ける環境が私にはあったし、今後もちょっとずつ事例が増えていくのであれば乗り越えられない壁ではないと思います。
―本目さんはいかがですか?
(本目)もちろん難しい点もありますが、逆に会社員の方よりも自分で予定がコントロールできる裁量が大きい分、比較的やりやすい部分もあるかもしれないです。昼間は調子悪いけれども、夜にちょっと調子が戻ってくるという場合には、夜在宅で区民の方への返信メールを書くといったこともできますし。特に保育士さんとか、妊娠中でも立ち仕事が続く職業の方は大変ですよね。そういうケースよりも、全然生みやすいんじゃないかとは思います。
ただ産後については、やはり私は少なくとも産後2ヶ月は自分の体のために休みたいと思っているので 、そこを議員として「どこまで勤めを果たせるか?」っていうところは、ちょっと心が痛むところではあるんですけれども。でもその分「他の時にやってるぞ!」っていう自負はあるので。
実際妊娠出産に限らず、どんな議員であっても怪我とか病気とか、一定期間議員活動を休む可能性はあり得るものなので。入院される方もいらっしゃいますし。そういうのとも比べても、「議員の妊娠出産も人生の一つ」という感じかなと思います。
―ありがとうございます。 先ほど「体調のいい時間を自分で選んで仕事ができる」という話がありましたが、一方で会社員であれば「何時間やったらもうおしまい」と一定時間で切り上げることもできます。議員さんのように自分の判断で作業されることが多いと、キリがなくなることもありますよね。
そういった仕事をしたい欲望と、でも体調的に気をつけなきゃいけないバランスについて、ご自身の中でどうコントロールされていますか?
(うすい)私はそもそも妊活を始めた頃から、病院との兼ね合いもあったので、仕事のやり方を考え直すようになりました。私はまだ1期目なので、最初の1〜2年目はなんでも詰めこんでたんです。
勉強会も出れるものは全部出て、1日3個ぐらい掛け持ちして。オンラインもまだなかったから 、一日中ずっと駆け回る日々を毎日送って。気づいたら「休みがないなぁ」みたいな。
ただ妊活を意識した時から、「このやり方はちょっと」と思うようになって。私の場合は、政策実現が最優先と判断し、他の人でもできることについては少しずつ省いていくように意識しました。本当は全般やりたい!という気持ちもありますが、私にしかできない、議会の中で私しか取り組む人がいないことに集中するようにしたんです。具体的に言うと、LGBTQやマイノリティ系の話ですね。
それ以外は「勉強会出たかった…」と思いつつも、我慢して全部に手を出していかないよう取捨選択し、優先順位をつけるようになりました。
おっしゃるとおり、議員の仕事は際限なくできちゃうところがあって、1〜2年目はそれで体調崩したこともあったので。実際妊娠してからつわりで点滴に通ったり、無理して動いたらお腹が張っちゃったりという経験も経て、ちょっとずつ仕事のやり方を変えていったというのが現状です。
―本目さんはいかがでしょうか?
(本目)愛ちゃんと同じで議員の仕事って本当にやればやるだけ際限がなくなってくるので、優先順位をつけるっていうのは第一子の出産時から大切にしています。限られた時間と体力の中で「何に私のリソースを振り分けるか?」というのは常に意識しています。
勉強会や夜の会合も、あれもこれも本当は参加したい、リアルもそうだしオンラインも増えたからこそいろいろ参加したいんですけれども、全部参加してたら当然体がもちません。だから「これだけは絶対外せない!」というのだけ参加して、あとは我慢するっというのはありますね。アーカイブ視聴があれば後で倍速で聞いたりとか、耳だけで参加したりとか。
取捨選択をするとインプットの機会はどうしても減りますが、さっき愛ちゃんが言った「自分にしかできないところ、自分しかやらないところ以外を捨てる」というのは私も同じです。私が力を入れてるかつ得意とするところでもある、子ども・女性・ICT、あとマイノリティ系ですね、
―ありがとうございます。妊娠してお子さんが生まれると時間も体力も限られるというのは同感です。自分の裁量で動けるからこそ、自分でリソースを見極めて取捨選択するのは大事ですよね。
今お二人がおっしゃられた「取捨選択」についてもう少し伺いたいのですが、お子さんがいるいないに関わらず、他の議員の方もお二人と同じように専門分野に特化しているのか、逆に全般的に幅広く取り組んでいる方が多いのか、傾向はどんな感じなのでしょうか?
(本目)どちらかのタイプもそれぞれいるかと思いますが、政策で「これが専門です」みたいな人の方が少ない気はします。
やっぱり今までの地方議員のあり方として、地元の声を聞いて個別の陳情を受けて、それを通していくみたいなイメージがなんとなくあるんですよね。「道路をなおしてほしい」とか「保育園に入れません」とかね。斡旋じゃないですけど、口利き的にそれを通すというか。本当はできないんですよ。できないんだけど 、そういうことを仕事だと今までの議員は思われていた。で、それがまだなんとなく続いてたりすると、新年会にいっぱい参加したり、いろんなところに顔出す人がいい議員、みたいな話になってくると思うんです。
あとは勉強会に参加する議員、しない議員というのもあると思います。おそらく私は勉強会にすごい参加する方で、参加するだけでなく自分で主催もしていますが、学ぶ意欲が強いタイプと、全然そうじゃないタイプがいるのが実際で、勉強会に一切参加しない議員もいます。
―なるほど。有権者としては、知見を深めたり、学ぶ意欲がある方に議員になってほしいですが、そうじゃないタイプの方が選ばれるケースもあるということなんですね。
(本目)そうですね。先ほどお話しした個別の陳情という点に関しても、ただの個別の陳情を解決するだけっていうタイプの議員と、個別の陳情を政策にちゃんと昇華させられる議員がいると思うんです。
例えば愛ちゃんの専門で言うと、「今同性のパートナーで暮らしているけれども、こういうことが保育園では認めてもらえてないんです」といった個別の陳情を、 その保育園に言うだけで止めるのか、それともそういう人たちが今後も出てくる可能性があるから制度を作って解決するのか、といった違いです。
私の考えでは後者の「制度や政策に昇華させる」ところが、議員の役割だと思っているので、後者がきちんとできていれば、勉強会だけが学ぶ手段ではないので、そういうところが評価されているというのはあるのかもしれませんね。
―今基本的に陳情を受けられるのは、やっぱりメール経由ですか?
(本目)私の場合は基本メールか問い合わせフォームを案内していることもあり、メールが多いです。もしくは公式LINE経由のご連絡ですね。
あとはリアルなイベントとして 「本茶会」という、お茶を飲みながら区政のことを話す会を以前はやっていました。今はオンラインでテーマを決めて「保活セミナー」とか「乳児の防災」といったイベントをやったりはしています。そういったイベント経由のご連絡もありますね。
―うすいさんはいかがですか?直接よりメールでの陳情が多いですか?
(うすい)私も圧倒的にメールやSNS経由が多いです。政策的に、本名を言いたくないという方もよくいらっしゃるので、SNSのDMでいただくこともあります。
そういった経由で一旦つながってから直接お会いすることが多いです。電話だけの場合もありますが、深刻なケースは直接会っています。
―なるほど。でも、議会には休業届を出されていても、区民の方はそういう状況にあることを知らないので陳情やご意見を送ってこられる方もいますよね。そういうときはどうされる予定ですか?ずっと目を通すのも気が休まらないと思うので、私としては休んでほしいですが…
(うすい)私は既に届け出を出してますが、今もオンラインでできる相談事は極力受けています。明日も当事者の方は現地に行き、私はオンラインで参加するといった案件があって。
産前のどの時期まで自分が動けるか未知数ですが、現状はオンラインでのご相談の予定はポツポツ入れていますね。
実際私はここまでの間にやり取りをしてる方達には、妊娠のことも伝えてます。もしかしたら、これからご新規で私にご相談をいただく場合は別の方にお願いするとか、状況を伝えてお断りする可能性もあるかもしれないというのは自分の中で想定はしています。
ただこれはどうしても私がオンラインでも参加しなきゃいけない、と思うものについては、極力参加していきたいという方針ではあります。
―本目さんはいかがですか?
(本目)私も同じですね。時期にもよりますが、毎日1日10件相談が来るとかではないので、オンラインでできることはオンラインで対応していきたいなという感じです。
どうしても対応できなさそうなのは、もちろん事情を伝えて、時期をずらしてもらったり、他の議員を紹介したりして対応していこうかなと思っています 。聞いた話だと、秘書さんを雇って対応してもらう、という手段を取る人もいるようですね。
―自営業の方だとやはり自分の稼働が売上に直結するので、しっかり休めないという話も聞いたことがあります。それと同じように議員の方も、どうしても問題点を自分で見つけてしまったり、有権者からの陳情や相談があったりするので、完全にオフモードとするのではなく、自分のできるところでキャッチアップや相談に乗りつつも、産前産後の休暇は取られるっていう形になるんですかね。
(本目)そうですね。そんな感じの過ごし方になるのではと今の段階では考えています。
■次回予告
以上が2022年11月、本目が妊娠8ヶ月の終盤、うすいさんが妊娠6ヶ月の頃の記録となります。
来月はいよいよ産前休暇に入った2人の様子をお伝えします。
聞き手:小林美保(本目さよ事務所インターン)
編集:平理沙子(WOMAN SHIFTプロボノメンバー)